今月突如入ってきたニュースに度肝を抜かれました。ソフトバンクグループの3四半期の利益が3兆円を超えたというものです、最初に思ったのがこれだけの巨額利益は日本企業では史上初めてじゃないかと思いました、そして孫さんやっぱり凄いな、彼くらいの超人なら成し遂げてもおかしくないな。こんなに景気の良い話ではありますが、私自身は孫正義さんと会ったこともなく、取引もなく、ましてやステークホルダーでもないのでメリットが一切ないことが少し悔しくも感じました。

それにしても3兆円というのは、かつて私が学生時代の頃に衝撃を受けた、イングランド銀行を打ち負かしたイギリスポンド通貨危機でジョージソロスが得た20億ドルの利益よりもはるかに上を行く桁違いの数字であり、企業収益ではアメリカや中国の後塵を拝していた日本企業としては起死回生の圧倒的存在感を示し「日本に孫正義あり」を世界中に知らしめたのではないでしょうか。

方や私は、先日に社員が確認せずに100円高い送料で発送していたのを注意したばかりですが、レベルの格差に愕然としますね。きっと孫さんなら投資が成功し100億円以上の利益が出ても、はい次!と感慨にふけることもないのだろうと思います。 

日本人だけではなく世界中で有名な孫さんですが初めてメディアでお目にかかったのはITバブル期の、私が20歳そこそこの頃でした。2000年のITバブル期前後に多額の投資を行っていて絶頂期にはビルゲイツを超えたこともあるというのは有名な逸話です。バブルが弾けて彼の資産も10分の1、100分の1になっても底から這いあがってまさに不死鳥のように蘇るというのは経営者が経験するあるあるですが、私が思う彼の一番の特徴は志がとてつもなく高いということに尽きるのではないでしょうか。

いつの日か聞いた彼の話で、「私は数千億円の個人資産があります、働かずに毎年1億円を散財しても数千年生きることができます。そしてこれだけの資産があればほぼ買えないものはないです、なので物欲が全くありません。では何をして生きていくのか、それは高い志を持って、人類に情報革命で貢献することです。」
彼は大病も患い余命幾ばくと宣告されたこともあるのでなおさら金欲とか名誉とかは興味がないのでしょう。

その志というのは自分の願望や夢を実現することではなく他者、しかも特定の少数ではなく全人類に対して貢献するというものであり、確かに身近なところで言えば携帯電話やネット接続料が安くなったのは私が会社でも個人でもソフトバンクを利用していることからしても実感しうるものだなと思います。

彼の著作はありませんが、ライターが書いた自伝的書作はいくつかあり、何冊かは読みましたので最も尊敬する経営者の一人です。

正直、高い理念や志というのは聞いただけではへぇー立派なものだなと思いますがそれを実践するとか実感するというのは具体的にわかりづらく、実際にどのような働きぶりや姿勢なのかというのはやはり本の活字からでは伝わってきません。

孫正義社長とはいったいどんな人だろう、身近にいたらと、ふとフランクに想像するときっととにかく猛烈な人なのではないだろうかと思います。目的を実現するために狂ったように猛進する人、思い通りにいかない時は机をバンバン叩いて訴えるようですので他人にも自分にも厳しい人、側近には昼夜問わずに仕事に駆り出させ、連絡も四六時中あって気が抜けないなど、実績が出ていなかったら周りの人はついてこないようなハードワークで今どきのゆとりは恐らくないと思われます。それでも優秀な幹部やブレインを従えて帝国のような企業を率いているのですから報酬も含めてそれに勝る魅力高い人なのでしょう。

ハードワークで有名な日本電産の永守会長も好きな経営者ですが、彼らに共通しているのは頭脳明晰はさることながらモーレツに働く昭和の香りが漂うも、仕事が楽しくてしょうがない、逆境や壁なんかがあればわくわくしてぶち壊すのに快感を得るというダイナミックな精神構造なのだと思います。

私も証券会社の勤め人時代には7:30出社の21:30上がりで、見込み客にガツガツとクロージングをするハードワークと相手への遠慮などお構いなしに夜討ち朝駆け営業の経験をし新規契約という目標に向かってひた走っていましたが、そのことを話した友人にはクレイジーだといわれました。

日本有数の経営者と比べるのはナンセンスですが、そのような環境を経験して緊張感があり、タフでもあるが向上心を持ち高い目標を達成するために邁進する人々とは今ではあまり関わっておらず、業績が安定しているのをいいことに心地よい温室で社員や関係者に気を遣って遠慮ばかりしてセーブしている今のスタイルが本当に良いのかと自問します。

今後新しいチャレンジはしていきますが、それこそ孫さんが言っていた「新しい事業をやるには7割程度の勝算と、全財産の3割くらい失う覚悟を持ってやる」という話を一つの参考にしてハードワークに代わる仕組化の事業投資にその勝機を見出すのが私らしさ、令和らしさかとも思います。

それにしてもビジネスにおいて遠慮、恥ずかしさ、怒りという感情は不要なので脳神経の手術をしてそれを取り除いてしまえばビジネスサイボーグになりとてつもない成果を上げるかもしれません。正し、良い方向に導くビジネスセンスや人望、果敢にリスクを取る度胸などももちろん必要なので孫さんはオールマイティに秀でているのでしょう。

2017年にソフトバンクの方からメールがあり、事業についてお話したいと二人組の人が来社されました。喫茶店でお話を伺いましたが、どうやらソフトバンクの投資事業の末端の営業部隊の方々でした。バイオ、ドローン、フィンテック、AI、ロボットの事業を行っているベンチャー企業とお見知りおきになり、案件が有望なら幹部会議にかけてゆくゆくは投資するという過程とのことでした。

弊社のことをフィンテック企業と思ったのでしょうか、丁寧に事業内容をお話し散会しましたがその後連絡が来ることはありませんでした。中小零細企業の隅々まで調査して金の卵を探している姿勢には正直驚きましたが、それだけ触手を伸ばしているとは彼の野望はおそらく全知全能の神になろうとしているというネット記事を思い出しました。

あらゆる成長企業に莫大な投資を行い、それが実った際には世界を動かす精鋭企業はすべからく全てソフトバンク孫正義の息のかかった群戦略の企業連合であると。いみじくも今回、日米の株価が30年ぶりの高値、および過去最高値をつけ大波に乗ったソフトバンクに信じられない利益をもたらしたことは、その予言に大きく近づいたのではないかと思ってしまいました。やはり投資業は最強のビジネスなのか、私は会社の資産を外国為替で運用しているのと同じようなものですが、企業投資はしていませんので乗り遅れた感を痛感するのですが、それでもこの高値圏で個人的に投資を始める気にはなれない今日この頃です。