4月に新宿へ移転してきて新天地でビジネス活動を始め、引越しや業務の移行には大きな問題なくスムーズに開店はできて1か月あまりが立ちましたが大きく変わったことがあります。それは4人いる社員のうち2人が辞職してしまっということです。

辞職理由に関して詳細は言いませんが、変化が起こる時は自らが意図したものばかりではなく想定外のことも起こり得ることを実感しました。

そして私自身が希望として感じる事柄も他の人にとっては必ずしもそうではなく、そのことに反応、議論等の意思疎通はせずに内々で一方的に諦めてしまい決別だけを伝えられるというのは最も避けるべきことでしたが現実となってしまったのは私の至らなさでもあります。日ごろから時間を設け、頭を使いコミュニケーションを密にとっている目的の一つである、相談もされず何も気づかずにすれ違ったまま結論だけを出してしまう状態でした。

私は社員に対してコミュニケーションを交渉ということが多々あるのですが、厳しい側面で言っているわけではなくお互いにとってなるべく良い結果を導きだすための譲歩のやり取りをした方が当然よいし、損失や不利益を被っているとだけ思われてしまうのも不本意ですのでどうしたら利益を引き出せるかをストレートに相手に問うことも禁じられているわけではないので積極的にやるべきと思っています。

また利益を求める行為というのはそれだけ相手にとって有益であるという実績や自信があることを意味しますので大いに歓迎なのですが、社長と社員という利害関係や立場の隔たりを強く感じてしまいそれが出来なかったとすると残念でなりません。

理由はどうであれ社員から辞職を告げられる時はいつでも寂しいものがあります。今までも何十人と辞めていった方と対峙しましたが、会社と私の関係にピリオドを打ち、ここよりも良い先を求める事実に変わりありませんからフラれた気分にもなるのです。そして彼らは社会保険適用事業所が約2百万社あると言われている世の中の何処かのうちとは無縁な会社へ、夢と希望を持ってステップアップできると思って旅立ちますので、そこに関しては嫉妬のような感情も微かにあるのです。

私なりに社員に対しては向き合っているし待遇も、機会も積極的に与えているつもりなのでそのように思うのか、今だに名実ともに小さい会社と思われてしまうやるせなさなのかはわかりませんが、以前のように作業だけやってもらえればそれでいい、嫌なら辞めればいいと思っていた時代とは違い、勉強会や理念を推して地道に関係構築を図ってきた結果がこのような儚いものであるのは、人を雇っていることの宿命であり誰しも経験がある乗り越える現実とも理解していますが、一方で他人は変えられない無力さとも思い同時に虚しくも思えてしまうこともあります。

家族のような会社、とは耳障りよく声高にアピールしている会社を散見します。綺麗ごとに聞こえていけ好かないと思っていましたが当の自分の会社はその境地に達することが出来ないのであれば自社にはない貴重なシステムがあるのだろうと、他の会社での経験が豊富な人事コンサルティングをコーチングとして受けていますので当事者意識で目を向けていかねばならないと思います。

そして私は本音を言うということに価値を置いていますので、残った社員に対しては上記の通り寂しく思うと伝えるとともに、もしあなたが辞意を表明したときに会社から留められる人物、相談できる関係であってほしいとも伝えました。

会社から求められている人間は必ず慰留されます、証券会社で勤めていた頃、出来る営業マンが辞めると言い出そうものなら、上司役員総出で何日も何時間にも渡って会議室に缶詰にされて説得され留められていました。根負けして残る人も少なくなかったと思います、口外されることはあまりないでしょうがもちろん条件の話もされていたと思います。

プロ野球選手がFA宣言すると残留してほしい球団は高額な年俸と待遇を提示して全力で阻止します。優秀で必要な人が留められるというのはどこの組織でも普遍なことで、私の持論である、ビジネスは「あなたでなくともいいんですと言われないためのゲーム」の身近なシビアでいて残酷な光景の1つであるとも思っています。

会社と社員の関係においては、「あたたでなくていい」と表明し転職する権利があるのは常に社員であるということで、会社から「あたたでなくていい」と一方的にレイオフすることは法律上認められていないので離職と解雇が平等ではなく非対称の関係性です。しかしながら、唯一会社からそれを表明する時が辞職の時であると実感します。雇われている立場の人が相手を見限っていると思っていて実は自らも会社から留められる立場であるがどうかを試されるのです。

私は社員から辞意を告げられた際に残ってほしい人にはそのように伝えますが、いまだかつて留めたことがあるのは1度だけです。その時は人手が不足していたというのが最大の理由ですが留めるのは難しいと思っていたら意外にも残ってくれたので、辞めたいと思う気持ちも確たる定まったものではなく、ぐらぐらとやじろべえ状態にあることも多いので、全力で労力と金銭的エネルギーを注いで留めに入れば翻意させることは可能であることも十分に可能と思いますが、まだその経験はありません。
「あなたでなくともいいと言われないゲーム」は逆説的で、本来は「あなたでなくてはダメと言わせるゲーム」でもあります。

辞意を表明した際に想像される、自分が会社から留められるべき点がいくつあるかを普段粛々と積み上げているかを省みることも重要で、やがて来る最後の交渉になり得る場で武装できていれば納得のいく結論が出せると思います。

そういう意味では、逆の立場の雇い主である私は普段からこの人が辞めると言えば留めるかどうかの観点で見ているというのは正直なところあります。以前とは違い求人にさほど苦労しない環境になったことで退職者が出ることに不安を抱えるよりはより良い方を採用する選択肢があるという余裕、自信のようなものもあるので一方的な弱気の交渉にはならないと思います。

以上のように書くと大変理論的過ぎて冷酷と受け取られかねないですが、人を雇うことの難しさは雇ってみて初めて痛感することで、数百人数千人と従えている経営者の能力や心労も計り知れず、尊敬の念を抱かずにはいられません。

今回を機に採用活動を開始しました。採用条件は多くあるのですが、1言で言えば今から教えられないものを持っている方なのだろうと思います。教えなくてもそれを当たり前にできる方、つまらないことや面倒なことをそう思わずにやれる、これをしたら評価される、されないと打算的な考えそがそもそもない方、素直に行動できる方です。

そのような姿勢や行動は育ち方や環境が育むものであると思いますので、教育するのではなく採用時点で獲得しようと思うのは随分と希少性が高く、難易度が高いというのは承知の上ですが実際にそのような人を採用している経験からして確実に存在していて縁が合えば出会えるはずと信じています。

採用とは企業活動において最も重要視すべき仕事の1つであり、経営者が心血を注いででも成功させる価値ある事項ですが、前回は新入社員に全ての面接をさせて判断させていたという常軌を逸した採用活動をしていた反省がありますので、入念に採用担当者、コーチングコンサルタントとブレストをして臨んでいます。

エン・ジャパンで求人を出稿し、1週間ほど経ちますが現在14件程応募があり、数人に面接依頼を掛けましたがいずれも返信がなく未だに面接が実現していません。1年半前の求人ではエン・ジャパンで200件ほどの応募があり手続きを処理していくのにもかなり多忙でしたが、コロナ禍にも関わらず今回の応募状況の幸先は良くないのが実状で、ターゲット層も応募数の2割程度しかいないので長期戦になりそうです。

採用担当の社員が良いことを言っていましたが、採用活動はオーディションではなくむしろこちらが選ばれる立場だということです。数多ある企業から選択してもらい興味を持ってくれた方に、会社としても最大限アピールできることを伝えたいと思います。将来性、評価や賞与制度、成長を後押しする環境は他の中小企業にはあまりないポイントです。そして今回の採用では企業理念を前面に掲げているのでその理念を伝えるだけではなく、どう思われているかも聴いてこちらが評価される立場として初心にかえって臨む覚悟です。