店舗軒先に副業で始めたブランド買取のデジタルサイネージ看板を導入してから25日間目にようやく来客がありました。当然ですが何の前触れもなく来店されましたので緊張と興奮のなかで何度もシミュレーションした作業手順を踏み査定を行いました。店舗には鑑定士は常駐していないので商品の鑑定は写真撮影してパートナーにラインで送信して金額の回答を待つというプロセスですが、初めての商品を極小の刻印を見つけて撮影するのは至難の業で、傷つけたり壊したりしたら一大事なので慎重に触れないと思いながら手袋をはめたりとったり手こずりながら行い、急いでルーペを取りに行き階段を踏み外して転げ落ちそうになり、いつも冷静な私が動転するほどでした。

この作業を行って分かったことがありますが、私のアドレナリンが噴出して心拍数があがる瞬間はまさにこのように初めての体験や意図した企てが実現した際に時間を忘れて夢中になると改めて実感しました。お金という利害が絡み、相手も真剣でその期待に応えるために真剣に臨む、その期待に応えられるか否かは自分の一挙手一投足で決まる、まさにガチンコの交渉、この張り詰めた空気感を感じることが楽しいと。この感動のために仕事をしているな、だからビジネスが好きなのだなと一方で冷静に分析する自分がいました。

  
ブランド買取は査定と交渉がありますが、外貨両替事業は交渉がほとんど起こりません。お客様は弊社HPをご覧になり予約して来店されますので買い決めをしてこられます。ディスカウントを希望される際は多少お受けすることもありますが、1度来店した方が比較して他社へ行ってしまうことはほとんどありません。

方や、ブランド買取は金額の不一致もさることながら粗相があって心証を悪くするようなことでも他社へ行ってしまう可能性がありますので言葉を選びなるべく、いや絶対に逃さないように神経を使わなければなりません。返答のあった査定金額を伝え、さらなる詳細の査定をするためお預かりいただければ更に買取額は増えますと告げて預かり査定をしていただくことに成功しました。幸いにもご親族の所有物で金額にこだわりはなさそうでしたので増額した金額を伝えれば成約に至る可能性は高そうです。ゲン担ぎとして初来店客の性別が女性だったこともホッとしました。

千里の道も一歩から、最初がようやく訪れましたが約1か月かかったというのは想定よりはとても遅いためさらなるディスプレイの改善をしなければ全然儲かりません。そこで、現状は広告内容の複数のページを数秒ごとに変わる設定をしていますが、私の見立てではやはり通行人には気づいてもらえずに認知されていないことが最大の原因ですので、このデジタルサイネージ看板を改造してド派手に目立つようにすることを目論んでいます。

看板上部に台を自作してターンテーブルを設置し、高級バックのレプリカを展示してクルクル回すという魂胆です。回す速度も一般的な展示用ターンテーブルの速さは1周が1分、早くとも30秒程度ですが、最速3秒で回る高速回転仕様にしてもらうようにメーカに依頼をかけています。一般的なものはアマゾンにて3千円程度で買えますが、特別仕様なので2万円以上します。

店舗ビジネスの経験は浅く成功体験もないのですが、普通に考えても重要ポイントは何といっても目立つことではないでしょうか。何をやっている店なのか、顧客に認知されなければ話になりません。大家さん曰く1日に50万人が通行する通りです、そこにルイヴィトンの高級バッグが物凄い勢いでブンブン回っていたら誰もが目にするのは間違いないと思いませんか?目にするどころか驚きますよ、何だこれは!?って。あー買取屋さんか、となり通り過ぎるでしょうが少なくとも認知はされるはずです。周りと同じことをやったり、既に見たことがあるものが注目されることなんぞありません。

巷には静止画で展示されている広告物からモニターなど動画で表示される広告物まであらゆるプロモーション活動が行われていますが、すべてはアピールしたい商品やサービスを知ってもらうためです。しかしながらあまりにも多くの広告物が氾濫しているためにそれに関心を寄せる人はおろか気づく人でさえ極僅かです。

方やリーチが高いものであれば広告費も高額になりますが、リアルの広告物では効果判定が極めて難しいです。10年以上前に六本木駅の入口の階段にポスターを貼って外貨両替の広告を出稿したのですが、東京メトロに2週間で10万円を払って効果はゼロでした。乗降客数が13万人と発表されておりその内の4分の1程度がそのポスターの前を通過したと計算して毎日3万人の人が目と鼻の先のポスターを全く気に留めていなかったという結果でした。ポスターのデザインが分かりやすいか否かでももちろん変わるでしょうが、それはじっくりと足を止めて見られた場合です、単なるポスターでそこに店舗があるわけではなく閲覧した人が気づいて調べて来店するというプロセスを踏む確率は限りなくゼロに近いでしょう。

したがってどんなにリーチのある場所で広告物を掲示したとしても気づかれなければ単なる無用の長物で終わりますし、デザインで気を引くにもよほど秀逸で目を引くものを作れるか、またそれなりの面積が必要になるのでディスプレイする側は皆苦労するのだと思います。

東京メトロのポスター以外でも今までの起業の歴史で多くのアナログ広告を手掛けてきました。フリーペーパーに掲載したり、新聞に掲載したり、レストランやバーにチラシを置かせてもらったり。そのいずれも効果が高くありませんでしたが、展示会で地道にチラシを手渡しで捲くことだけは効果が高く今でも機会があれば行っています。

高級バッグぶん回しは、目立つということに関していえば恥も外聞もなくとにかく結果を残さなければならないので四六時中考えた末にこれでいこうと決めました。それでも埒が明かない場合はまたなんかしら考えなければなりませんが、それでも試行錯誤を実践できる場がありそのプロセスを楽しめるのもビジネスの醍醐味ですので今回のように来店が実現した時は金には換えられない報酬でもあります。

起業などというものは多くの人が挑戦しますがそのどれもがほとんど実らず、競争に参加することもなく、誰からも看取られずに静かに消えていくパターンは多いです。最初は皆やる気があります、初めから上手く人はいません。しかし、想定した結果が出ずとも何とか試行錯誤して盛り返そうとしますが、数か月、数年うだつが上がらない状態が続けば誰だってやる気は失せて他の違うことに気移りしてしまいます。

その時に覚えておいてもらいたいことは、継続することの重要性は当然のことながら、人からどう思われようがスマートではなくともとにかく目立ちましょう。はっきり言って人は自分のことなどどうも思っていません、気づいてすらいません。

私が起業直後の頃は以前勤めていた頃の名刺を持って、ここにいたんですよ。とコントみたいなことをやっていました。転職活動でもないのに昔いた会社をアピールするなど滑稽としか言いようがないですが、とにかく少しでも印象を持ってもらおうとしたのでしょう、全く的外れなことでしたが、毎日が苦肉の策という感じになるので頭はフル回転していても空回りして結果が出ない失敗の連続です。同級生はまともに平均年収くらいを稼いで家庭なんかも持ち始めるのにこちらはキャリアもなく金も稼げずに本当に恥を感じていました。

それでもホームページを作って顔写真を載せてプレスリリースに勤しんだり足しげくチラシを捲きにいったりを続けました。起業はすること自体が恥であるとエールを込めて言いたいです。恥をかくことは悪いことではなく、むしろどれだけ恥をかいたかがその人の器になるとさえ思えます、後から思えば美味しいコンテンツです。このように恥をかくことはリスクではありません、結果を出せずに潰れてしまうことの方がよほど恥ずかしいしリスクです。

事業を拡大するため、個人的にもお金を稼ぐため、客寄せパンダやマスコットキャラクターになって前面に出ることは厭わない気持ちは今も変わらないです。

孫正義さんが起業した頃にみかん箱の上で売上利益を豆腐のように1兆、2兆と数えるようにしたいと演説したところそれを聞いたアルバイトが全員辞めてしまったという逸話は有名です。そのアルバイトだけではなく誰が聞いても信じないことでしょう。実際今の孫さんは、彼の言うことは誰もが信じるという立場に全く逆転しています。それはいうまでもなく結果を出したからにほかなりません。結果を出すと誰もが目の色を変え一目置いてくれます、こちらの思う通りに事を運ばせてくれます、「うん」と言ってくれ断られなくなります。つまりは思い通りに行きやすくなります。それを世界は信用と言ったりもします、まずは結果を出すことにフォーカスしましょう、それ以外はあまり関係ないです。