外貨の歴史【アメリカドル】
世界のマネーの約60%がアメリカドル
世界で使用されているドルは22種類あり、ドルを自国通貨としている国は、国名にドルをつけて区別しています。カナダドル、オーストラリアドル、シンガポールドルなどが例ですが、一般的にドルと言えばアメリカドルのことです。世界で流通しているマネーの約60%がアメリカドルとされ、アメリカ国内だけでなく、ヨーロッパや東南アジア、アフリカなど多くの国で商品を購入したり、サービスを受けたりすることができます。アメリカドルが最初に発行されたのは1785年で歴史があります。
そのころの世界経済の中心はアメリカではなくヨーロッパで、中でもイギリスが主役でポンドが力を持っていました。しかし当時、世界で起きていた主戦場はヨーロッパで、イギリスは徐々に国力を衰退させていきます。一方でアメリカはヨーロッパの戦地に物資や武器を送る取引を通じて、外貨を獲得し、国力を増大させていきます。第一次、第二次の二度の世界大戦を経て、通貨の主役がポンドからドルに移行します。現在は信用できる基軸通貨として世界中で使用されています。
ちなみにドルの種類が多いのは、第二次大戦後の世界貿易がドルを中心に行われるようになったため、イギリスの植民地だった国が自国通貨をドルにしたからです。かつてはポンドが流通していましたが、イギリスの植民地だった過去を拭い去るためにドルを採用したジンバブエのケースもあります。カナダやメキシコはイギリスの植民地ではありませんが、アメリカとの貿易が盛んだったことから自国通貨をドルにしました。
アメリカドルの基軸通貨の歴史と今後
アメリカはイギリスの植民地として出発したため、当初は自国の通貨はなく、イギリスのポンドの他、フランスやスペイン、ポルトガルの外貨が使用されていた歴史があります。特に貿易の中心的役割を担っていたのがスペインドルで、多くの人々が生活に使用していました。イギリスのポンドも流通していましたが、安い為替レートによる不平等な貿易が行われます。イギリスが一方的に利益を得るという通貨体制だったため、独立戦争後にアメリカが建国されてから、自国通貨の発行が議論されます。
それまで人々が多く使用していたスペインドルを通貨単位とすることとし、アメリカドルが発行されます。そのためアメリカ建国と自国通貨ドルの歴史が重なっています。第二次大戦後、国力が衰えたイギリスのポンドに代わって、世界の基軸通貨に採用されたのはアメリカドルです。ドルの金交換を保証する金本位制であったことも大きな力になりました。現在、世界中に流通している信用度や価値の高さから、決済取引や海外投資、FXの取引でも使用されています。
例えば支払いをするときに互いの国で使用している通貨、円やユーロで決済することはできません。一旦、ドルに両替した後に決済する手続きになります。現在の基軸通貨ドルは今後も続いていくかどうかは不透明です。世界経済におけるアメリカの影響力が以前より落ち、中国やインドが急速に国力を増大させており、世界のGDPのランキングが入れ替わる可能性もあるためです。ただ、世界で突出した軍事力を持っていること、世界の公用語が英語であること、IT業界の世界的企業の多くがアメリカにあることなどを考えると、まだまだ通貨の地位は安泰と言えます。
アメリカドルの為替相場の歴史
外貨としてのアメリカドルと日本の円の為替取引が行われたのは、1949年で当初は固定相場制で1ドルに対して360円の為替レートでした。固定相場制の歴史は1971年まで22年間続くことになります。第二次大戦後、アメリカドルは世界の基軸通貨として流通していましたが、海外収支が慢性的に赤字状態だったアメリカは、海外にドルが大量に流出し、徐々に基軸通貨としての地位が低下していきます。1971年に戦後初めて、貿易収支が赤字を記録し、国内の景気対策のため、公定歩合を引き下げ、ヨーロッパ諸国の金利と格差が生じます。
投機的な資金が移動するようになり、当時の西ドイツは固定相場制から変動相場制に転換しました。国際通貨不安を招いたことから、アメリカ大統領ニクソンは、金交換をストップするなど新しい経済政策を断行します。後にニクソン・ショックと呼ばれる政策により、ヨーロッパ諸国と日本も固定相場制から変動相場制に転換しました。1971年のスミソニアン会議により、主要国通貨の対ドル為替レートの調整が行われ、円は1ドル308円に切り上げられます。
1973年に起きた第一次オイルショックの影響により、対ドル円レートは270円から300円前後で推移し、1978年の第二次オイルショック以降、円安傾向が続きます。その後、日本経済のバブルによりさらに円安に、バブル崩壊で円高になり、1995年には史上最高の1ドル79円75銭を記録します。それ以降は1ドル100円を上回っています。アメリカドルはITバブルや不動産バブルによる好景気でドル高となりましたが、2008年のリーマンショックで落ち込み、現在は小康状態を保っています。